東京都の井の頭池の生態系回復と水質改善を目指す「かいぼり」が、1月25日と26日に初めて都立公園で行われました。この取り組みは、2017年に井の頭公園が開園100周年を迎えるにあたり、都、三鷹市、武蔵野市、地元の商工業者などから成る実行委員会によって計画されました。
このプロジェクトでは、井の頭池の美しい環境を取り戻すため、行政と市民がタックルを組み、2日間で約260人のボランティアがかいぼりに参加し、鶴見区の三ツ池公園で4回もかいぼりを行っている三ツ池公園水辺クラブのメンバーとも協力しました。
湧水の枯渇と外来生物の脅威
かつては、井の頭池は3万トンもの湧水を持ち、多種多様な生き物が生息する美しい池でした。昔の井の頭池は水が澄み、水草が茂り、魚から水生昆虫までさまざまな生物が住んでいました。湧水は1日に2回も入れ替わるほど豊かで、その水は飲み水としても利用されるほど清澄でした。
しかし、宅地化の進行により雨水の地下への浸透が減少し、また、地下水の過剰くみ上げなどが原因で湧水が枯渇し、水質が悪化してしまいました。透明度が低く、酸素不足や高水温といった過酷な環境に耐えられる生物だけが生き残りました。
更に悪化を招いたのは、外来生物でした。ブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニ、ミシシッピーアカミミガメなどの外来生物が、生態系に直接的な影響を及ぼし、他の生物を食べたり、生息地を奪ったりして、かつてこの池に住んでいた生物たちを姿を消させてしまったのです。
●在来魚の保護
もともと井の頭池には、モツゴ(くちぼそ)やトウヨシノボリ(ハゼ)などの在来魚やエビ類が生息していましたが、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚の流入によって、その数が激減し、現在、池にいる魚の90パーセント以上がオオクチバス、ブルーギルなどの外来魚で、在来生物を捕食して、生態系に大きなダメージを与えています。
かいぼりによって、外来魚を排除することで、在来の生きもの復活が期待されています。
近年は公園などの池で水質改善や外来魚駆除を目的に
おこなわれる例が増え大きな成果をあげている。鶴見区の三ツ池公園でも4回実施され効果立証されている。
●水質改善
池の水は植物プランクトンが増加して濁り、水質悪化の原因となる窒素やリンが増加してしまった。 かいぼりで池の水を抜き、池底を天日干しすることで泥の中の窒素やリンが減少し、水質が改善される。井の頭公園内、七井橋北側の野外ステージ付近には、来園者にかいぼりや池の自然再生についての情報を展示する「かいぼりステーション」を開設しイベントが行われたこの日は、捕まえた魚をさっそく水槽に入れて展示し、魚のことや池の生態系のことなどをくわしく解説した。 このブースは、かいぼりが終わる3月中ごろまで毎日開設される。
2年後に弁天池もかいぼり実施へ
池底を天日干しした後、二月下旬から再び注水し、お花見の三月下旬には元の水量に戻る。2年後、今回かいぼり対象外だった弁天池を実施する予定だ。そして開園100周年を迎える平成29年まで、1年おきにかいぼりをおこなっていく予定。
「かいぼりステーション」の開設で情報公開
井の頭公園内、七井橋北側の野外ステージ近くには、来園者にかいぼりや池の自然再生に関する情報を提供する「かいぼりステーション」が設置され、イベントが行われました。この日は、捕獲された魚が即座に水槽に展示され、魚や池の生態系について詳しく解説されました。このブースは、かいぼりが終了する3月中ごろまで、毎日オープンしています。
クローズアップされた不法投棄~鶴見の三ツ池とはここが違う
かいぼり実施は都立公園で初めて行われ、同時に池の水を抜くのは30年ぶりの出来事で、そのため多くのマスコミが連日取材に詰めかけました。
東京都立井の頭公園(三鷹市、武蔵野市)は、首都圏でも屈指の人気を誇り、四季を通じて多くの人々が訪れる場所です。実際に足を運んでみると、吉祥寺駅からすぐの場所にありながら、繁華街に近い静かな森や美しい池、動物園、文化施設などがあり、心を癒すリフレッシュの場となっています。また、地元の住民にとっても駅に向かう通り道として親しまれています。
しかしながら、かいぼりによって水位が下がると、不法投棄された自転車、ラジカセ、バイクなどが姿を現しました。自転車だけでもおよそ250台が発見されました。この点において、鶴見の三ツ池公園とは大きな違いがありました。
2014年井の頭池かいぼり観察日記
http://www.city.mitaka.tokyo.jp/c_categories/index06002003007.html
井の頭恩賜公園100年実行委員会「水と緑部会」
http://inokashirapark100.com/water_green/index.html
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