レアールつくの商店街にある「喫茶タンゴ」は、昭和51年(1976年)の創業以来、約半世紀にわたり鶴見・佃野町の人々に親しまれてきました。
しかし、家族の事情や築70年を迎えた建物の老朽化により、1月31日をもって閉店。そして、3月末には建物も取り壊される予定です。
喫茶タンゴは当初、奥様の実家は金物屋を営んでいましたが、喫茶店として新たにスタートしました。店主の高橋英昭さんはその喫茶店を引き継ぐこととなり、以来、多くの人々に愛される店として営業を続けてきました。実は、お付き合いされている頃から2階に下宿されていたため、高橋さんにとって佃野は半世紀以上の馴染み深い地でもあります。
マスターがかつて、「創業当時はモダンなお店と言われ、今ではレトロな店と呼ばれるようになった」と語っていたことが、印象に残っています。
最終日、開店前の11時に訪れると、店内はすでにほぼ満席。創業当初から変わらぬ味を守り続けてきた、一番人気のナポリタンを注文しました。トッピングのスクランブルエッグとの相性も抜群でした。

変わらぬ味
レアールつくの商店街
レアールつくの商店街は、「弘明寺商店街」や「横浜橋通商店街」と同じ時期に完成した歴史ある商店街です。ドラマやCMのロケ地としても使われる、まさに“商店街らしい商店街”といえると思います。
県内でも数少ないアーケード商店街であり、買い物時間には車が通らないため、安心して買い物を楽しめます。
この商店街の協同組合で、4期にわたり理事長を務めたのが、「喫茶タンゴ」の店主・高橋英昭さん。イベントの企画から販促活動まで率先して取り組み、商店街の活性化に尽力してきました。




歌う理事長
高橋さんは、名門・早稲田大学合唱部の出身で、混声合唱団「水曜会」に所属。毎週水曜日には合唱練習に通う姿が見られました。
「ハマ歌SHOW」鶴見区大会で優勝するほどの実力の持ち主で、理事長としての挨拶代わりに一曲披露することも。いつしか「歌う理事長」と呼ばれるようになりました。



タンゴの歌声喫茶
昭和30年代に流行した、アコーディオンの伴奏に合わせて客がリクエストした曲を皆で歌う「歌声喫茶」。その草分け的存在が、東京・新宿の「灯(ともしび)」でした。
平成10年(1998年)ごろから静かにブームが復活し、再び注目を集めるようになります。
実は、「喫茶タンゴ」で歌声喫茶を始めたのは奥様の提案でした。社会人合唱団で奥様と出会ったこともあり、音楽を愛するご夫妻ならではの企画でした。当初は隔月開催でしたが、次第に毎月開催へと変わり、「昼間だと参加できないお客さんがいる」と、いつしか夜の部も開催されるようになりました。
また、地域のアーティストによるコンサートも行われるなど、音楽の絶えない、音楽好きが集う場所となっていました。
高橋さんご夫妻が築いてきた温かい交流や思い出、美味しい料理、これからも多くの人の心に残り続けることでしょう。SNSには『いつもそこにあると思っていた、灯が消えるよう』という投稿が寄せられており、多くの人が同じ気持ちを抱いている。


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