【本の雑誌2025文庫ベスト10第2位】鶴見区在住ホラー作家・黒史郎氏も執筆『ひどい民話を語る会』を読む

『ひどい民話を語る会』――笑ってあきれ、そして考えさせられる民話の底力

ひどい民話を語る会京極 夏彦 (著), 多田 克己 (著), 村上 健司 (著), 黒 史郎 (著)/角川文庫

「本の雑誌が選ぶ2025年度文庫ベスト10」が2025年12月に発表され、
鶴見区在住のホラー作家・黒史郎氏も執筆に名を連ねる
『ひどい民話を語る会』(京極夏彦・多田克己・村上健司・黒史郎/角川文庫)が、堂々の第2位に選ばれました。
妖怪・民俗・怪談を愛してやまない作家4人が、全国各地から収集した“ひどい民話”を縦横無尽に語る一冊。
もともとは伝説的なトークイベントとして開催されていた「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化されました。

学問としても芸術としても評価されにくく、表舞台からこぼれ落ちてきた荒唐無稽な口承文芸。
しかし本書で語られる「ひどい民話」は、知識ではなく語りそのものを楽しむエンターテインメントとして、生き生きとよみがえります。

4人の収集力の凄さ

まず圧倒されるのは、4人の収集力の凄さです。
「よくぞこんな話を集めてきたものだ」と、感心するやらあきれるやら。

内容は、う〇こやオナラ、そして有名な昔話に隠された“とんでもない真実”のオンパレード。
どれもこれも、かなりひどい。
――けれど、ひどいのに読んでしまう。不思議な引力があります。

考えてみれば、テレビもスマホもなかった時代、
夜、子どもたちに「何か話して」とせがまれた爺や婆が語って聞かせたのが民話。
子どもが喜ぶ話となれば、どうしても“う〇この話”が多くなるのは当然です。
子どもの反応を見ながら話を盛ったり、早く寝かせるために突然オチをつけたり――
そんな即興性といい加減さこそが、民話の本質なのだと気づかされます。

隣の爺が真似をして大変なことになる話、
う〇こやおならで殿様から褒美をもらう話、
便所の屋根を直そうとして必ず便所に落ちるお爺さんの話……。
愚かで、くだらなくて、でもどこか人間くさい“村の話”が続きます。

民話とは「民」の話

作中で黒史郎氏は、
「民話は土地のものではなく、文字どおり“民”の話であり、人の数だけ形がある」
と語っています。
この言葉が、本書全体を貫く大切な視点だと感じました。

作家たちの原点にも触れる対談

対談の中で京極夏彦氏は、
今のようにゲームもなく、子どもの本といえば絵本くらいしかなかった時代、
鬼や河童、天狗が登場する昔話に強く惹かれた一方で、
どこか「物足りなさ」を感じていたと語っています。

児童書のパターン化された世界、情報の少なさ。
その欠落こそが、後に作家へと向かう原動力になったのではないか――
そんなことも読み取れました。

まとめ

第一線で活躍する作家たちが、本気で集め、本気で楽しんだ民話の世界。
笑いながら、あきれながら、民話の底力を思い知らされる一冊でした。

黒史郎さん
鶴見区在住のホラー作家 黒史郎さん
横浜怪談 川崎怪談 是非ご一読下さい

ひどい民話を語る人たち

京極夏彦 きようごくなつひこ
1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家、お化け友の会代表代行。九四年“姑獲鳥の夏』でデビュー。2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語
』で直木三十五賞、一一年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、二三年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞など受賞多数。幼いころから書籍を通して民話に親しんできただけあって、民話にまつわる情報の蓄積量が半端ない。ひどい民話を語る会では進行的な役割も担う。

多田克己 ただかつみ
1961年、東京都生まれ。作家、妖怪研究家。デザイナーを経て文筆家となる。 編著に『絵本百物語 桃山人夜話』『暁斎妖怪百景』『妖怪図巻』、著書に『百鬼解読』 がある。読売・日本テレビ文化センターにて妖怪学に関する講座の講師を務めている。 民話との付き合いは専ら妖怪がメインではあるものの、独自路線でひどい民話世界を見つめ、隙あらば妖怪の話をしようとする。

村上健司 むらかみけんじ
1968年、東京都生まれ。ライター。お化け友の会世話役。日本全国の妖怪伝承地を巡る趣味が高じて文筆家となる。編著書に『妖怪事典』『日本妖怪大事典』『日本妖怪散歩』『手わざの記憶』『怪しくゆかいな妖怪穴』『がっかり妖怪大図鑑』「10分、 おばけどき」シリーズなど。

多田と同じく民話は妖怪メインで着目していたが、それなりに民話集は目を通しており、尾籠な話題を好むことからひどい民話を語る会に参加。

黒史郎 くろしろう
1974年、神奈川県生まれ。作家。2007年「夜は一緒に散歩しよ」で「幽」 怪談文学賞長編部門大賞を受賞しデビュー。著書に『実話怪談 黒異譚』『ムー民俗奇譚 妖怪補遺々々』『ボギー 怪異考察士の憶測』『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』『SCPハンター シャイガイを確保せよ!』など多数。

民話へのアプローチはやはり妖怪からスタートしているが、興味の対象は妖怪の民話だけに止まらず、他メンバーとは異なる視点でひどい民話を語った。

インスピレーションは鶴見川から得ていると以前話している。

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