レズビアンであり一児の母でもある長村さと子監督のドキュメンタリー映画「ふたりのまま」の上映会に参加した。子育て中の3組、妊活中の1組、計4組のレズビアンカップルの日常を追った作品だ。
同性婚が認められていない日本にも、子どもを育てる同性カップルは少なくない。差別や偏見を恐れ、関係を周囲に明かさず暮らす人もいる中で、この映画はそうした家族の姿を静かに、しかし確かな手触りで映し出していた。
私自身、同性カップルがどう生活し、どう家族をつくっているのか、ほとんど知らなかった。だからこそ映画を観て最初に感じたのは、意外なほどシンプルなことだった。「ごく普通の家族だ」ということだった。

それぞれの方法で子どもを迎える
登場する4組には、それぞれ異なる家族のかたちがあった。精子提供を受けた友人とその両親も交えて赤ちゃんを育てる組、ステップファミリーとして同棲を始めたシングルマザーと同性パートナーの組、不妊治療を続けながらも年齢と費用の限界に直面している組、精子バンクを通じて生まれた娘がまもなく成人を迎える組。
そこにあったのは特別な人たちの特別な生活ではなく、悩み、話し合い、時に周囲の助けを借りながら一歩ずつ家族をつくっていく姿だった。

丁寧に答えてくださいました
「授かりもの」ではなく
日本では昔から「子は授かりもの」と言われてきた。だが1983年に国内初の体外受精児が誕生した当時、この技術は「神の領域」「不自然」と強い批判にさらされている。生殖医療が「子どもをつくる」という発想自体は、決して新しいものではない。
それから40年余り、不妊治療は身近になった。それでもこの映画に映る女性たちには、「授かった」の一言では表せない意志と覚悟があった。制度が整わない中で自ら情報を集め、身体と向き合い、多くの時間を重ねてようやく子どもを迎えている。
ドナーも含めて、ひとつの家族
印象に残ったのは、外国人男性から精子提供を受けたカップルのエピソードだ。子どもは2人の母親とその両親たちに支えられて育てられ、家族みんなでの子育ての姿はとても自然に見えた。
一方でドナー男性は、子どもが「母親が2人」「ハーフ」であることでいじめられないか心配していた。その不安は、日本社会がこうした家族のかたちをまだ「当たり前」として受け止めきれていないことの裏返しなのかもしれない。
その後、もう一人の母親もこの男性から精子提供を受け、出産を予定していることが語られる。血のつながりだけでなく、子どもを迎える過程やその後の関わりを通じても家族は形づくられる。制度が想定していない家族のかたちが、制度を待たずすでに存在している——この映画はそれを静かに伝えていた。
「つくる」の重み
異性愛の夫婦がキャリアや人生設計の一環として選び取る「つくる」と、法律婚すら許されず正規の医療ルートからも締め出された同性カップルが子を持つために選び取る「つくる」とでは、出発点の切実さが違う。
海外の精子バンクを利用したり、個人間で提供を受けたりと、自分たちで方法を探すしかない場合もある。それは自由な「選択」というより、制度の外に置かれた人たちが「そうするしかなかった」結果でもあるのだろう。だからこの「つくる」は、能動的な選択というより、家族をつくろうとする切実さの表れなのだと思う。
「ふたりのまま」生きていく
映画に登場するカップルたちは、誰かに認められるのを待っているわけでも、制度が追いつくのを待っているわけでもない。「ふたりのまま」、子どもを育て、悩み、笑い、日々を生きている。制度上の「家族」と、実際に暮らす「家族」の間にある隔たりが見えてくる。
同性婚が法制化されれば生殖補助医療の制度も変わっていくかもしれない。それは家族とは何か、誰が親なのかという、より大きな問いにもつながっていく。だが制度が変わるのを待つ以前に、家族はすでにここに存在している。
長村監督自身にも子どもがいる。なぜ産みたかったのか…、監督は「親になりたかった」「大人になりたかった」「自分の身体を使って産んでみたかった」と語っていた。その言葉が印象に残った。
産みたい人も、産みたくない人もいる。どちらも、一人ひとりの人生の選択として尊重されるべきものだ。

※本作の上映会について 主催は「映像女性学の会」。2001年に生涯学習事業として開催された都民カレッジ講座「映像女性学」の受講者を中心に結成され、2002年より女性監督作品の上映と監督トークを企画・開催している。今回の上映会は第54回目にあたる。
長村さと子監督 プロフィール
1983年5月生まれ/東京在住。子育てをしている・または希望する LGBTQ を支援する一般社団法人「こどまっぷ」代表理事。レズビアンで一児の母でもあり、すべての女性が生殖補助医療にアクセスできる社会を目指して活動している。新宿二丁目にて、ジェンダーやセクシュアリティ、人種、障害の有無を問わず誰もが安心して過ごせる場づくりとして「足湯 cafe&bar どん浴」等を運営。LGBTQ+の居場所づくりに20年以上携わる。また、足立区で映画祭を主催する団体「そらにじあだち」共同代表として、地域での啓発活動にも取り組んでいる。
https://kodomap.org/ 一般社団法人「こどまっぷ」
長村さと子監督 著書 絵本「あおいらくだ」

茂田 まみこ (著), 長村 さと子 (著), 楓 真知子 (イラスト)
旅に出たあおいらくだ。ある日、茶色いらくだと出会います。 最初はお互いの違いに驚き、とまどいつつも、違うことの楽しさ、素晴らしさに気づいていきます。みんな違うからこそ、みんないい! 他者との違い、感じ方、考え方の違いを知ることのわくわくどきどき! 多様性を認める感性を培うことのできる絵本。LGBTQ、発達障害、海外ルーツの子どもたちなど、共生社会の土壌をはぐくむのに最適。 また、本書の売り上げの一部は子どもの支援のために寄付します。

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